CFとLinuxが見せてくれた未来

かつて組み込み機器にWindowsの波が押し寄せたことがある。NT4.0の発売がその契機となった。Windows95はその不安定さから組み込み機器に使おうと誰も思わなかったが、NTは違った。DOSベースのWindowsに比べ非常に安定していたのだ。また、Windowsの開発ノウハウも使用できる。かくして組み込み機にはWindowsブームが訪れた。
Windowsの弱点はOSの大きさであった。NT4.0ではOSだけで数百MB、2000では1GB程度の容量をつかってしまう。その組み込み機器に全く関係ない機能であっても、外すことが出来ないOS。それがWindowsだった。
組み込み機器の弱点は基本的に駆動系。プリンタが付いていればプリンタ。冷却ファンが付いていれば冷却ファン。HDDが付いていればHDDが弱点となる。当然もっとも致命的な弱点はHDDだ。
組み込み機器にはHDDを積みたくないが、代替機器で駆動系を持たないメディアは高価で、特にWindowsが搭載可能なサイズのメディアは、到底組み込み機器に使用できる価格ではなかった。
256MBのCFが市場に安価に出回り始めた頃、Linuxはほぼ成熟し、企業で使われ始めていた。Linuxは必要最小限度の機能を選択的に持たせることが可能で、組み込み機器が本当に必要な機能は数十MBで提供可能であった。ここで最強の組み合わせである、CFとLinuxで組み込み機器を構成することが可能になったのだ。
そのメリットは計り知れなかった。
CFのメリットは基本的に熱をあまり出さない。駆動系を持っていないため、壊れにくい。輸送時の破損が基本的に発生しない。故障率は激減した。
Linuxのメリットは、余計なサービスがいないため、起動が速い。ライセンス料がいらないため安い。CUIを前提としているため、リモートからのメンテナンスが非常に容易。メンテナンス性は圧倒的に向上した。
今、膨大な容量のSSDが作られているし、組み込み機器に特化したWindowsも作られている。上記のメリットは限りなく小さくなった。しかし、5年以上も前にこれだけの状況を作り出してくれたCFとLinuxに私は大いに敬意をはらう。

というわけで、未だにHDDをメディアとして使用しようとしている、大してディスク容量を必要としない組み込み機器のプロジェクトは滅びると良いと思うよ!