不合理なUIを検出するテスト

任天堂のゲームのUIは非常によくデザインされている。そのUIデザインの源にはおそらく「肩ごしの視線」という手法が役立っていると思われる。肩ごしの視線とは、新作ゲームを作った際にそのゲームのド素人を一人捕まえてきて、ゲームをやらせ、どのように戸惑ってるのかを観察することで、そのゲームに足りないものを見つけるという手法のことだ。

何かを作る人は、作っているうちにその製造物に慣れてしまって、使い勝手の悪さに気づかなくなってしまう。その使い勝手の悪さを「未経験の人の初使用」を観察することであぶりだしているのだ。

某コンビニのコーヒーマシンが初期に「デザインの敗北」とまで言われるほど炎上したのは、デザイナーが、肩ごしの視線を持っていなかったからだろうと思っている。

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本日電車に乗った際に、Suicaの残高が数百円になったので、某私鉄の券売機でチャージしようと思ったところ、チャージ機能のUI設計が結構ひどいことに気が付いた。

電車の乗り降りくらいにしか使用していないSuicaに2000円チャージしようとしたが、財布の中に5000円札と10000円札しか入っていなかった。5000円札でチャージしようとしたところ、なぜか5000円札がそのまま出てきてしまい、チャージされないまま「お札が残っています」と音声アナウンスされてしまう。2度試して、2度とも同じ結果だったので、5000円札の誤認識かな?と思い、今度は10000円札を投入。しかしまったく同じ動作でチャージされない。やっと釣銭切れの可能性に気づいて画面をよく見ると、画面の上方に表示された「5000円札」「10000円札」のアイコンに、小さい×がついた状態になっていた。やはり釣銭切れだったようだ。

いやいや、現在使用可能な札の種類をアイコン表示するだけじゃなくて、5000円札入れた時点で「釣銭切れです、1000円札または硬貨でチャージしてください」くらいのメッセージ出せよ、と思ったが、まあアイコンに気づかない私が異常なのかもしれないと思い、おとなしく別の券売機でチャージしたのであった。

さて、チャージが終わって、ふとさっき使用していた釣銭切れの券売機を見ると、まったく同じ動作で困っているお客さんがいた*1。多分この券売機は「千円札が規定枚数たまりきるまで、5000円札以上の紙幣で1000円単位のチャージしようとすると、適切なエラーメッセージを表示しないまま奇妙な動作をして、お客さんを困惑させ続ける」のだろう。

多分、あるべきUIの方針としては2つあって、1つは「特定のお札が使用できないことをもっと目立たせる」という方針だ。例えば、お札アイコンについている×マークを点滅させる」という方法が考えられる*2。もう1つは上に書いたように「特定の操作ができないことをユーザに通知する方針」。例えば使用できない金種を入れた時点で、「その金種は使えない」という警告メッセージを出すことだろう。
個人的には両方やった方が良いと思う。

動作テストでUI設計ミスに気が付かないんだろうかとは思うけれど、結局のところ、動作テストは「設計通りに動作するかを確認するテスト」であって、不合理なUIを検出するテストではないのだ。不合理なUIを検出するテストとして肩ごしの視線テストほど有効なものはないだろう。と思ったのであった。

*1:一応、「今5000円札使えないみたいですよ」と声をかけた

*2:人間は画面内の動くものにそこそこ反応してくれる