知識人が常識として持っている誤解はその伝播をキャンセルすることが難しい

インフラとしての「ライフライン」という言葉は、和製英語だと思われているようだが、実は地震工学においての専門用語である。そのため、その辺の英和辞書や英英辞書に掲載されていなかったし、英語圏では「さほど地震が発生しないので」あまり知られていない。そんなことが、wikipediaに記載されている。このwikipediaかぶれとか言われそうだが、wikipediaで該当項目の和製英語と誤解されている旨を2006/5/27に記載したのは私だ。専門用語だというソースを出せという突っ込みに対しては「lifeline earthquake engineering」で検索しろと答える。米国土木学会(ASCE)のページにちゃんと用語の定義が記載されている

Lifelines:
Lifelines are the systems and facilities that provide services vital to the function of an industrialized society and important to the emergency response and recovery after a natural disaster. These systems and facilities include communication, electric power, liquid fuel, natural gas, transportation (airports, highways, ports, rail and transit), water, and wastewater
  • 全然

「全然」という言葉が、本来否定に使われる言葉であるというのも誤解であって、本来は肯定否定どちらの表現にも使用されていたものが、否定表現で使用されることが多くなったため誤用と誤解されている。宮沢りえが何かの時に「全然大丈夫です」とコメントしていたのをみて、生島ヒロシが「全然というのは本来否定に使う言葉です」とか言っていたのを思いだす*1

  • 実験

これらの誤解は教養がある人々が持っている誤解である。情報というものは「教養がある方」から「教養がない方」に伝わっていきやすい。そして「教養がある方」に認識を改めさせるのは、少数に対しては可能だろうが、おおよそすべてに伝えるためには全新聞の一面に記載でもするほか手段はない。そんなことは不可能だ。

というわけで、wikipediaに記載したのは「誤解の伝播」をインターネットで食い止められるかという個人的な実験だった。3年経過したところで確認してみると、誤解の解除にある程度貢献しているように見受けられるが、まだ誤解は多いようだ。キャンセルすることは難しい。

*1:そもそも「大丈夫です」というのは「あなた方の想像に反して」の意味を含むであろうから、否定の意味で使用している