事実と真実

事実は無限の情報を持っている。
たとえば、私は昨夜コンビニ弁当を夕食とした。侘しいことだがそれはどうでもいい。
これに関する事実は実質無限にある。マクロな方面では購入先はセブンイレブンで、このセブンイレブンは××店で、自宅から×mのところにあって、オーナーはだれそれで、年商はいくらで・・・など。
ミクロなほうに迫っていけば、この弁当の材料は何と何で、米が何粒入っており、重さは何グラム、カビ胞子はどのような種類がいくつ入っていて、残存する細菌はいくつで、何個の水分子を持ち・・・など。
ただし、これらの情報のほとんどすべては人間にとって全く意味を持たない。

真実とは無限に存在する事実の中から、必要な情報を切り取ったものだ。その必要さはすべての人にとって異なる。たった一つの真実とは、その真実を主張する誰かにとっての真実であって、私にとっての真実ではない。

寄生獣という傑作漫画がある。その中にミギーというキャラクターのこんなセリフがある。
「お互い理解し会えるのはほとんど点なんだよ 同じ構造の脳をもつはずの人間どうしでさえ 例えば魂を交換できたとしたらそれぞれの想像を絶する世界が見え聞こえるはずだ」

人間が人間を理解できたと感じるとき、それは共有する点を増やしたということだ。それ以上でも以下でもない。世界中の人が分かり合えるなどというのは幻想だ。地球はひとつだが世界はひとつではない。分かり合えない上で互いの意見に寛大でなければならない。