勝利の手順書

多分、「手順書通りにやりました」と主張する人が、実は手順を読み飛ばして誤っていたとしたとしても、手順書作成者の負けなんだろう。

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職業柄、手順書を結構作るのだが、読み飛ばしや誤解による誤りってのは非常に多く発生する。なぜ発生するのかといえば、バグの皆無なプログラムが考えられないように、人間のやることの精度が、一般的に低いことが原因の一つだ。99%の精度の人が100項目設定すれば平均で1項目は誤ってしまう。

また、対象者と作成者のレベルが異なることも原因の一つだろう。手順書を作る人は、一般的にはその事に精通している人なので、知識レベルが高く、作る人が当たり前と感じることが、その手順を使う人の当たり前と一致しない。
対応策として、「小学生にもわかる手順にしろ」という比喩が用いられたりするが、小学生にわかる手順書は極めて冗長だ。冗長さは読み飛ばしを誘発する。
プログラマー作成の手順にありがちなのが、ジャンプとか分岐する手順書だ。1章から5章に飛ぶように指示があり、5章には3章に飛ぶように指示がある。シーケンシャルでない手順書は読み飛ばしを発生させるために存在するようなものだ。なんというか「ゲームブックにおける指セーブ」のような。

熟練者、通常者、未熟者がつかえる手順書はこんなものじゃないだろうか。

  1. まず熟練者ならそれを見るだけで行える手順を大きな見出しで書く。
  2. 次に通常者ならそれを見るだけで行える手順を中見出しで書く。
  3. 最後に細かい手順を書く。
  4. 何のために行う作業なのかを意識させる。
  5. その手順が正しく行われたか確認する手順を含めておく。

例えばc:\tempというディレクトリを作成し、c:\aaaディレクトリの中身をコピーするという手順を考えた場合。

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1.作業前にc:\tempディレクトリを作成し、c:\aaaの中のデータをバックアップします
1-1 エクスプローラでc:\tempディレクトリを作成します。
1)キーボードの「windowsマーク」のキーと「E」キーを同時押しし、エクスプローラを起動します。
2)コンピュータをクリックすると、Cドライブが表示されます。Cドライブをダブルクリックし、右ペインを右クリックして「新規作成」−「フォルダー」を選びます。
3)ディレクトリの名前をtempにします。
1-2 エクスプローラでc:\aaa内のファイルをc:\tempディレクトリにコピーします。
1)エクスプローラでc:\aaaを開き、すべてのファイルを「CTRL+A」で選択します。「CTRL+C」でファイルをコピーします。
2)エクスプローラでc:\tempを開き、「CTRL+V」でファイルを貼り付けます。

2すべてのファイルがコピーされたか、ファイル数とファイルサイズの合計で確認します
以下略

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尚、1)などの細かい手順には必ずハードコピーをつけること。たぶんこれだけでミスは激減することだろう。
まあ、手順書に頼らず、設定がすべてうまくいったか確認するツールを用意することが、最も重要だろうと思うが。