ポイントシステムは初期パラメータが命

「猫も杓子も」と言って良いほど、ポイントシステムの導入は多い。固定客を作るためには、非常に効果的だからだ。ただ、効果的かもしれないがシステムの導入は非常にハードルが高い。単店舗であれば初期投資千万単位ですむだろうが、10店舗を超えて使用可能なポイントシステムを構築するためには、インフラ含めて莫大な初期投資とランニングコストが必要となる。
初期投資として、
1)ポイント管理するサーバ
2)サーバへポイントを問い合わせる端末
3)サーバと端末をつなぐインフラ
4)ポイントのキーとなるカード(最近では携帯電話とかもあり得るか)
5)店員に対する教育
6)パテント料
が必要となる。
1)2)については、ハード費とソフトウェア費と構築費が必要で、当然のことながらバックアップをかなりのレベルで考慮しなければならない。ポイントは顧客の資産だからだ。
3)はハード費と構築費
4)はハード費と発行に必要な経費が必要となってくる。バーコードや2次元コードなら安価。
5)はいわずもがな
6)はポイントシステムというもの自体のパテントが少なからず存在するので、SIerを雇うかポイントシステムパッケージを購入しない限り避けて通れない。

次にランニングコストだが、
1)サーバ、端末、ネットワークの保守費
2)カード発行/再発行の経費
3)通信費
4)インフラ/ハード監視費
5)正しくシステムが動作していることの確認費
6)バックアップ費
7)その他ポイントシステムが存在することによって増える人件費
が必要となる。
1)は定額契約しておくべきだろう。
2)は稼働してみないとわからない。
3)も定額契約できればしておくべきだ(リアルタイムなポイント付与であれば特に)。
4)5)についてそれが可能な仕組みをあらかじめ実装しておき、社員が行えばよい。定額で監視を外注するのも良いだろう。
6)はどのように実装したかにもよるが、別メディアへの落とし込みであればメディアの経年劣化に対する見積もりは可能だろう。
7)はポイントを扱うことによって増加する人件費だ。事前予測はそれなりに難しい。

さて、今まで必要と書いたのはあくまで「システムをまわす」為に必要なコストであって、目標会員数によってある程度の精度で予測可能だ。
実際に一番重要なのは「ポイント発行がもたらすコスト増」だ。この予測が難しい。考慮すべきパラメータは
1)ポイントを何円に付き何ポイント付加するか(ポイント発生率)、また何ポイントを何円に換算するか(ポイント換金率)
2)顧客別にポイント率を変更するか
3)買い物以外のポイント発生トリガをどうするか。
4)どのようにポイントを回収するか。
等が考えられる。
1)の主流は「ポイント発生率×ポイント換金率」が0.5〜1%くらいか。
2)は顧客をレベル付けしてポイント付加率を変える方法。
3)は買い物袋、誕生日、特定の商品、来店、購入時自動抽選、天候、購入額等。
実は、4)のポイントの回収方法が非常に難しい。出したポイントを如何に回収するかということはあまり意識されていないが、発行したポイントというものは負債であって、積もっていけば企業の存続を脅かしかねない。例えば一時的に資金繰りが苦しくなったからといって、ポイント発生率を下げたとしても、換金率は下げられない。ポイントは顧客の資産だから。市場に出回っているポイントが多ければ、ポイント発生率を下げた効果が現れるまでに破綻してしまうようなこともあり得る。発生率が下がったら、ポイントを貯めるよりも今あるポイントを使った方が得だからだ。
よって、出回ったポイントが一定以上を超えないように、回収や失効の方法をあらかじめ考えておく必要がある。よくある方法としては「発生後何年で無効とする」「XXXポイントになったら自動で割引券を発行する」「XXXポイントになったら自動で現金還元」「次回購入時、常に前回付加ポイント分金額還元」等。
「最終来店日からXXX日で無効とする」については、それほど回収に効果がない。数ヶ月に一回買い物に行くけど、ポイントは使わないというタイプの顧客からは、どうやっても回収できないからだ。よってこのタイプの場合、他に回収方法を考える必要がある。例えば、ヤマダ電機ではまれに「ポイントの価値を1.3倍に見立てる」セールを行ったりしているが、これは会員からポイントを回収したいが為に行っていると考えられる。

というようなことを全て始める前に考えておかないと、ポイントシステムから企業は破綻する。企業が破綻すればためたポイントは0になる。

消費者の目から見れば、これだけポイントシステムが存在するんだから、初期パラメータ考慮不足によって、どれが破綻するかわかったもんじゃない。ヤマダ以外のポイントは早めに使っておきましょう。ということだ。